蜜入りりんごの豆知識!実はりんごの「蜜」は甘くない?

美味しいりんごの特徴と言われると、蜜入りりんごをイメージする方が多いのではないでしょうか?リンゴを切った時、中心部分にはちみつのような蜜が入っているりんごほど美味しいと感じる人が多いと思うのですが、それでは、このりんごの蜜の正体は何なのでしょうか?

りんごの『蜜』と言われるぐらいだから、はちみつみたいな甘い糖の成分と考える人も多いのですが、実はこの蜜の部分は、たいして甘くないという特徴を持っています。中には、りんごを切った時に美味しく見せるため、注射器などを使って蜜のような物を注入しているのでは…と疑っている方がいるかもしれませんが、当然そのようなこともありません。

そこでこの記事では、蜜入りりんごがなぜ美味しいとされているのか、またりんごの蜜の正体は何なのかについて解説します。

りんごの蜜の正体とは?

それではまず、りんごの蜜の正体について解説します。

りんごの中には、カットした時に、中心部分が透明の蜜のような状態になっているものがあり、このタイプのりんごが「蜜入りりんご」と呼ばれ、日本では美味しいりんごの特徴とみなされています。

ただ、ここで気になるのは、りんごの蜜の部分は、いったいどのような成分なのか…ということではないでしょうか?そこでここでは、蜜入りりんごの蜜の正体が何なのか、またどうしてこの蜜のような状態になるのかについて解説してみたいと思います。

蜜の正体とはソルビトール

蜜入りりんごについては、収穫後に人工的に蜜を追加しているのではないかと考えている人がいるかもしれませんね。

しかし当然そのようなことはなく、りんごの蜜は「ソルビトール」と呼ばれる糖アルコールの一種で、自然と生成されるものとなります。りんごのソルビトールは、光合成によってつくられ、葉から軸を通って果実に運ばれるという仕組みになっています。そして、果実の中のソルビトールは、りんご本来の甘みの基になる「果糖」や「ショ糖」に変化するのですが、果実が完熟を迎えるとそれ以上変化することをやめ、蜜として貯まることになるのです。

つまり、蜜入りりんごというのは、リンゴが完熟を迎えているという証拠であり、それ以上甘くなることができないということを表しています。

りんごの蜜は「甘くない」!?

蜜入りりんごと聞くと、とても甘くて美味しいりんごという印象を受けると思います。実際に、蜜入りりんごは、完熟状態を迎えているりんごを指しているため、甘くて美味しいという点は間違いありません。

しかし、蜜入りりんごが甘いことについて「蜜が甘いから」と考えているのならそれは間違いです。実は、りんごの蜜であるソルビトール自体はそこまで甘みが強いわけではないのです。

ソルビトールは、果糖よりも甘くない!

先程紹介したように、りんごはソルビトールが果糖やショ糖に変化することで甘みを増していきます。そして、完熟してそれ以上、甘くなることができなくなれば、蜜として果実の中に残るという仕組みになっているのです。

つまり、蜜入りりんごの『蜜』となるソルビトールに関しては、果糖などに変化する前の状態で、実はこの状態の場合、果糖の半分程度の甘さしかないと言われているのです。そのため、りんごを食べる時に蜜の部分だけを切り取って食べてみると、蜜がない部分よりも甘さを感じないはずです。

また、蜜なしりんごと蜜入りりんごでは、後者の方が甘くて美味しいというイメージがあると思うのですが、完熟しているのであれば、両者に甘さの違いはほとんどないと思います。

りんごの蜜は「甘さを加える」のではなく完熟の証拠

上述したように、りんごの蜜は、完熟することによって溜まっていくものです。つまり、りんごをカットした時、中心部分に蜜がある果実については、完熟していることを示しているため、りんご本来が持つ甘さが最大限引き出せていて美味しい状態な訳です。なお、りんごの甘みについては、蜜によって甘く感じるのではなく、ソルビトールが果糖やショ糖に変化しきっているため、強い甘さを感じられ、蜜そのものが甘いわけではありません。

ちなみに、蜜入りりんごは、蜜なしの物よりも香りが強くなるため、それによって甘さを感じやすくなるとも言われています。

蜜入りりんごを選ぶときのポイント

りんごを選ぶときには、「蜜入りりんごが良い!」と思う人が多いはずですが、それではスーパーなどでりんごを選ぶとき、蜜が入っている物を選ぶには何に注目すれば良いのでしょうか?先ほどから紹介しているように、蜜入りりんごは、完熟したりんごのことを指していて、以下のような特徴を持っているものが蜜入りの可能性が高いです。

  • ・中くらいの大きさのりんご
  • ・持った時にしっかりと重量感を感じる
  • ・りんごの裏側(お尻の部分)が濃い黄色をしている

上記のような特徴を持つりんごは、蜜入りの可能性が高いです。りんごを購入する時には、「可能な限り大きい果実を選びたい」と考えてしまいがちですが、実は、大きすぎず小さすぎない「中くらいの物」が蜜入りりんごの可能性が高いとされています。また、同じような大きさのりんごを持ってみて、より重量を感じる物の方が、果汁を多く含んでいると判断でき、蜜が含まれている可能性が高くなります。

りんごが完熟しているかどうかを確認する際には、裏側の凹んでいる部分の周辺の色を見ると良いです。この部分が薄い緑色の物よりも、濃い黄色に色づいている物の方が熟しているため、蜜が多い可能性が高いです。

まとめ

今回は、蜜入りりんごについて、りんごの蜜の正体は何なのか、またりんごの蜜は甘いのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、りんごの蜜は、熟していく過程で果糖などに変化するソルビトールが溜まっていることで生じます。これは、果実が完熟してそれ以上、甘くならないことを指しているため、美味しいりんごの特徴として、日本では好まれているのです。ちなみに、諸外国でのりんごの扱いについては、蜜が入っていないりんごの方が好まれる傾向にあるそうです。これは、海外ではりんごは長期保存や加熱調理するケースが多いためです。生で美味しく食べることができるりんごは、水分を多く含んでいるため、調理した時にベチャッとした仕上がりになるから、蜜のないりんごの方が好ましいと考えられるのだそうです。

ちなみに、蜜入りりんごは、完熟しているという証拠であると紹介しているため、蜜が入っていないりんごは美味しくないのか…と感じてしまった人が多いかもしれません。しかし、そのようなことはなく、りんごは品種によって蜜が作られにくいものがあるのでそういった品種のりんごについては、蜜が無いものでも完熟しています。