秋から冬にかけて旬を迎える食べ物に「さつまいも」があります。近年では、「焼き芋」の人気が非常に高くなっていて、都市部などではスイーツの一種としても人気で、焼き芋専門店なるものも登場しています。
さつまいもは、その他の芋類とは異なり、非常に強い甘みを感じられる食品なので、「果物の一種」と判断している方も少なくないように思えます。一般的には、保存性も非常に良い食べ物と認識されているため、保存方法などについては、特に気にするようなポイントはないと考えている方も多いかもしれませんね。
しかし実は、気温が下がる時期に出回る食べ物であるのに、さつまいもは「寒さに弱い」という特徴を持っていて、間違った保存方法を選んでしまうと、想像以上に早くダメになってしまう可能性があるのです。そこでこの記事では、これから手に入れる機会が増えるかもしれないさつまいもについて、その基礎知識や長持ちさせるための保存のコツをご紹介します。
さつまいもの分類について
それではまず、意外に勘違いしている方が多い「さつまいもの分類」について簡単にご紹介していきます。皆さんの中にも、さつまいもは「とても甘い=果物」という認識を持っている方がいるのではないでしょうか?
最近では、焼き芋がスイーツの一種というような扱いを受けるようになっていますし、焼き芋の甘さなどから「さつまいもは果物の一種」という認識を持っている方も増えています。しかし、一昔前までのことを考えると、芋のてんぷらなど、あくまでも調理に使われる食材という認識で、果物ではなく野菜なのではないかという意見が根強いです。
これについては、さつまいもは基本的に野菜という認識が正しいです。そもそも、日本国内における「果物なのか?」の分類基準については、「甘さ」や「糖度」は全く関係ありません。果物か野菜かの分類については、このサイト内の別記事で詳しく解説していますが、簡単に言うと「木になるものが果物」という分類がなされています。もう少し詳しく言うと、農林水産省の分類では「1年で収穫する草本植物」を野菜、「2年以上栽培する草本植物や木本植物の果実」を果樹と定義しこれが果物です。つまり、一般的には果物という扱いのスイカやイチゴに関しても、農林水産省の分類上は「野菜」なのです。
ちなみに、さつまいもの分類に関しては、国の調査でもその分類が定まっていません。各省庁によるさつまいもの扱いについては、以下の通り、いろいろな分類をされているのです。
- 農林水産省の野菜生産出荷統計等:いも類
- 総務省の家計調査:生鮮野菜(根菜)
- 厚生労働省の国民健康・栄養調査:いも類
このように、さつまいもは、農産物としての分類では「野菜」に該当しているのですが、栄養に係わる分類では「いも及びでん粉類」になるなど、意外にややこしい食材と言えるのです。ただ、スーパーなどにおいては、野菜コーナーで売られているのが一般的ですし、皆さんの認識上では「野菜」と考えておけば良いと思います。
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さつまいもの保存方法について
それでは、さつまいもの保存方法について解説していきましょう。さつまいもの保存に関しては、その他の野菜などと比較すると「保存性が良い」というイメージが先行し、どのような環境においても長持ちするという印象を持っている方が多いです。しかし、この考えは間違っているので注意が必要です。
実は、さつまいもという食べ物は、「寒さに弱い」という特徴を持つ食材なのです。冒頭でもご紹介したように、秋から冬にかけてが食べごろを向かえる食べ物なので、寒さに弱いというイメージを持っている方はほとんどいないと思います。しかし、さつまいもは、5℃以下の環境で保存していた場合、低温障害と呼ばれる現象を起こしてしまい、黒く変色してしまうのです。
低温障害とは、寒さで細胞が死んでしまう障害のことを指していて、さつまいもの場合可食部が黒く変色するという現象が現れます。そして、黒く変色した部分は、甘さがなくなり苦みが強くなるため、本来のさつまいもの美味しさを楽しめなくなってしまうのです。したがって、間違った方法でさつまいもを保存し、低温障害のような症状が出た場合には、変色した部分を切り取って食べるのをおすすめします。ちなみに、普段私たちが口にしている「さつまいもの実」の部分については、植物の「根」が肥大化したものです。
ここでは、さつまいもを低温障害などから守り、長持ちさせるための保存方法について解説します。
常温で保存する方法
さつまいもは、上述しているように「寒さに弱い」という特徴を持っているため、冷蔵庫の中での保存は傷みやすくなる可能性があります。したがって、長持ちさせたいと考えるのであれば、基本的に常温での保存が望ましいと考えてください。
ただ、さつまいもが出回る時期については、外気温が低くなる時期でもあるので、何の対策もしないまま玄関や屋外で保管していると、冷蔵庫並みの低温環境となってしまう可能性があります。その一方、屋内での保管になると、エアコンの影響で、必要以上に暖かい環境になってしまうという問題があり、保管の場所や方法に迷ってしまう方が意外に多いのです。
さつまいもを保管する際の温度については、10〜15℃程度が適温で、5℃以下の寒すぎる環境は避けてください。また、暖房が効いた暖かい環境もあまり望ましくないので、可能であれば10~15℃程度の温度が保たれている冷暗所で保存するようにしましょう。なお、さつまいもの美味しさを長持ちさせたいなら、以下の手順を守りながら保存すると良いです。
- STEP1 1本ずつ新聞紙で包む
さつまいもを乾燥から守るため、1本ずつ新聞紙で包んでください。新聞紙が余計な湿気を吸収してくれるので、カビの発生なども防止できます。ちなみに、常温保存する際は、洗わずに新聞紙に包みましょう。水分がついてしまうと、傷みやすくなるので、洗うのは食べる直前にしましょう。 - STEP2 紙袋や麻袋、段ボールなどに入れる
新聞紙で包んださつまいもは、通気性のある入れ物にまとめて保管すると良いです。紙袋や麻袋、ダンボールなどがあれば、それにまとめて入れておけば良いです。ビニール袋にまとめて入れると、中に湿気がこもってしまうので、腐りやすくなります。 - STEP3 風通しが良い、直射日光が当たらない場所で保管
保管は、風通しが良く、直射日光が当たらない場所を選びましょう。パントリーなど、食品を長期保存するための冷暗所のような場所があれば、そこが望ましいです。
さつまいもを常温保存する際は、上記の流れで保存すると良いです。
冷蔵で保存する方法
次は、さつまいもの冷蔵保存についてです。これは、気温が20℃を超えるような時期の保存方法と考えてください。実は、さつまいもは、気温が20℃を超えると、発芽すると言われているため、まだ気温が高い時期に手に入れたさつまいもの場合は冷蔵庫の野菜室などで保存するのが望ましいのです。
保存の流れは、以下の通りです。
- STEP1 1本ずつ新聞紙で包む
さつまいもを乾燥から守るため、1本ずつ新聞紙で包んでください。常温保存と同じく、洗うのは食べる直前です。 - STEP2 ポリ袋に入れ、袋の口をゆるく結ぶ
新聞紙で包んださつまいもは、ポリ袋に入れてください。その際、乾燥や蒸れを防ぐため、袋の口はゆるめに結びます。 - STEP3 冷蔵庫の野菜室に入れる
冷蔵庫に入れる際は、野菜室に入れてください。野菜室は、冷蔵室より温度が高めで湿度が高いことから、乾燥を防いで鮮度を保ってくれます。
冷蔵保存する際は、上記の流れに沿って野菜室で保存するようにしましょう。上で紹介したように、基本的には寒さに弱い食べ物なので、気温が高い時期に手に入れたさつまいもの保存に限ります。
冷凍庫で保存する方法
さつまいもを長期保存したい場合は、冷凍での保存が望ましいです。ただ、先ほども紹介した通り、さつまいもは寒さに弱いという特性を持っているため、冷凍保存する際には、そのまま冷凍庫に入れてはいけません。
さつまいもを冷凍保存したいという場合は、事前に加熱してから冷凍保存するようにしましょう。そうすることで、風味や食感をある程度キープすることができ、調理の際はそのまま使用することができるようになります。冷凍保存の場合は、以下の流れで保存すると良いです。
- STEP1 さつまいもを洗い、カットする
冷凍保存の場合は、まずさつまいもを洗います。その後、皮つきのまま使いやすいサイズにカットしましょう。 - STEP2 アク抜き
10分程度水に浸けることでアクを抜きます。 - STEP3 加熱する
電子レンジで加熱する、もしくは鍋で茹でることでさつまいもに火をいれます。 - STEP4 保存袋入れて冷凍庫に
火を入れたさつまいもは、粗熱をとったうえ、水気を拭き取ります。その後、冷凍用の保存袋に重ならないように並べ、袋の中の空気を抜きながら口と閉じてください。それを冷凍庫に入れて保存すれば、長期保存が可能です。
まとめ
今回は、さつまいもの美味しさを長く維持するための保存方法について解説しました。
記事内でご紹介したように、さつまいもは、気温が低くなる秋から冬にかけて出回る食品ではあるものの、寒さには弱いという特徴を持っています。そのため、一般的に食品の長期保存の基本である「低温環境での保存」があまり望ましくないという点に注意しなければならないのです。ただ、気温が20℃を超えるような時期に手に入れたさつまいもに関しては、発芽を防ぐために冷蔵庫内の野菜室での保存が望ましいです。
このように、さつまいもの美味しさを長く保つためには、時期に合わせて最適な保存方法を選ばなければならないという点に注意が必要です。
